コーネリア×ルルーシュ

「…………」

コーネリアは悩んでいた。目の前には畳の上で転寝しているルルーシュ。

「…何だ?何を悩んでるんだ?すればいいだろう?簡単な事だ」

後ろにはピザを頬張っているシーツー。

「見てる分には面白いが、何故悩む?迷うぐらいならしてしまえばいいのに」

「…っ」

にやけるシーツーの顔はかなり腹が立つが。何も反論出来ない。滅多に無い、千載一遇の機会。そう、やってしまえばいいのだ。

「だが、膝枕など…」

(この年増…意外と初心で面白いな)

「コイツも、勉強や生徒会で最近疲れてたみたいだからな。してやったら元気になると思うぞ?」

もっと焚きつけてやろう。シーツーはピザを頬張りながら、追い立てる。

「そ、そうか?」

露骨な反応。コーネリアの目は泳ぎきっていた。

「……まあ、お前がやらないなら、私がさせてもらおうか」

「…ちょっと待て、誰もやらないとは言ってないぞ」

「そう言うなら、早く行動に移すことだな。起きてしまうぞ?」

コーネリアの反応は予想済みだったのか、新たにピザを取り出すシーツー。まったく、幾つ食うつもりだこの女。

「……何か、気恥ずかしいな」

「そうか?見てる分には微笑ましい姉弟だぞ」

「姉弟」を強調してシーツーは笑った。

「う…ん」

ごろんと、ルルーシュは寝返りをうつ。丁度、ルルーシュの寝顔がコーネリアの視線と絡み合う。
コーネリアは胸の奥が少しくすぐったくなるのを感じた。

――――――――――

ルルーシュ×コーネリア

――――――――――

部屋の鍵は開いていた。そっと隙間から部屋の中をのぞくと、コーネリアはベッドの上で横になっていた。どうやら昼寝をしているようだ。

「…失礼します」

元々、借りた本を返しに来ただけだ。そう、何も不純な動機なんて無い。そう自分に言い訳をして、忍び足で部屋に侵入する。

「……っ」

だが、視界にコーネリアの寝顔が映ると、途端に金縛りにあったかのように動けなくなってしまった。
綺麗な寝顔だ…魅せられた感情は留まる事を知らずに、ふらふら引き寄せられていく。

「…ぁ」

今、コーネリアの寝顔は自分の顔の真下にある。

ひ、卑怯か…?
い、いや、男として…っ
ばれたら嫌われるかも
で、でも俺は姉さんが好き…

「いけっ、行くんですルルーシュ!!」

目まぐるしく蠢く思考。激しく高鳴る鼓動。それは、一瞬にして砕かれた。
部屋の入り口を見ると、シュナイゼルとクロヴィスがカメラを回しており、その陰に隠れるように、ナナリーとユーフェミアが覗き込んでいた。

「あーーーーーーーっ!!」

ルルーシュの情けない叫びが木霊した。

――――――――――

ルルーシュ×C.C.

――――――――――

「…なあ、何してるんだ?お前」

ついこの間。俺の仮面を持って逃亡した子猫が木の枝で路頭に迷っていた。細い枝の上で、小さい体を震わせている。

「……はぁ、仕方ないな」

子猫の円らな瞳が俺を射抜く。しょうがないので、そっと手を伸ばすと…

「にゃ!!」

子猫は可愛い泣き声を上げて、俺の頭に飛び乗った。

「…おっ、と」

「み、み♪」

正直、少し重い。子猫は何とか俺の頭の上で、バランスを取っている。

「……はぁ、全く、しょうがないな」

「しょうがないのはお前のほうだ」

シーツーの声がした。振り返ると、彼女はピザを食べながら、こちらに近づいてくる。

「…行儀悪いぞ」

「私の勝手だ、全く…猫ぐらい素直に助けられないのか」

シーツーは呆れたように、だけどその口もとは笑っていた。

「……だけど、それがこの猫の為になるとは限らないだろ?」

「お前は、そんな小さいことを気にしてるのか」

シーツーは笑って子猫の頭を撫でた。ちょっと、その表情が可愛く見えてしまった。

「いいじゃないか。したいと思った事が、それが出来るならやればいいだろう。その後の問題は、猫自身の事だからな」

子猫は俺の頭から肩に器用に飛び乗り、俺の頬を舐めた。

「しかし、しっかりと懐かれてるな」

「………まあ、コイツに懐かれたくて助けたわけじゃないが…別に、悪い気分じゃない」

「………素直じゃないな、本当に」

「…五月蝿い」

ルルーシュはふっ、と微笑を浮かべた。その表情が猫の可愛さと非常に噛み合っていて、何故だかシーツーは胸の奥がキュンと疼くのを感じた。

――――――――――

C.C.×ルルーシュ

――――――――――

「おい、ルルーシュ、ピザ買ってくれるんじゃないのか?」

「ルルーシュ、暇だ。何処か連れて行ってくれ」

「新しい服が欲しい、買いに行く」

「全く、お前は……」

「コレだから男は…」

あぁ…もう限界だ。コイツの気まぐれには付いて行けない……!!

「おい、シーツー」

「……丁度良い所に来た。ピザを作ってみたんだ。お前も食べてみるか?」

意を決してシーツーの部屋に出向くと、いきなり出鼻を挫かれた。くそ、こんなものじゃ騙されないぞ……

「……美味いな」

「…そうか?」

俺の反応を見てから、シーツーは満足そうにピザに口をつけた。毒見か、それとも…

「……しかし、どうしたんだ?急にピザを作るなんて、頼めばいいだろう?」

「………」

何気ない疑問に、シーツーは眉を顰めた。何か俺地雷を踏んだ…?

「……ふん、何時もお前を連れ回してるからな」

少しの沈黙の後、シーツーはぼそぼそと呟いた。

「………」

「………」

気まずい沈黙。何か言いたいのに、気の利いた言葉が見つからない。

「……で、お前は何しに来たんだ?」

「もう、いい」

シーツーの顔は少し赤くなっていた。多分、俺の顔はもっと赤くなっているに違いない。

――――――――――

ユーフェミア×ルルーシュ×ナナリー

――――――――――

「ルルーシュ、起きてください」

「……お兄様」

天気の良い日曜日。何だか体を揺さぶられているが、それが逆に心地よくて深いまどろみに誘われていく。

「……ユフィ姉様、お兄様はお疲れのようですから」

「駄目よナナリー。せっかく良い天気なんだから、勿体無いでしょ?」

遠くで誰かの会話が聞こえる……

「もう、仕方ないんだから…」

ちゅっ。

「…えっ!?」

唇に柔らかい感触。意識が瞬時に覚醒し、跳ねるように飛び起きた。

「おはよう、ルルーシュ」

「…おはようございます、お兄様」

目の前には、少し驚きながらも、笑いを堪えているナナリーと既に噴き出しているユフィ。

「……何をしたんだ?」

「野暮な事を聞くのね」

「………どっち?」

ユフィを睨みつける。ユフィはニコニコ笑っているだけで、一向に表情を崩さない。

「ナナリー?」

「……お兄様は、どちらのほうが嬉しいですか?」

ナナリーは微笑を浮かべたまま、とんでもない事を聞いてきた。

「え…あ…」

「……じゃあ、どっちにキスされて欲しい?」

ユフィはぎりぎりまで顔を寄せてくる。何かの拍子で唇が触れ合う、そんな距離。

「け、結局、同じ質問じゃないか」

「……もう、つまんないなぁ」

ユフィはそっと離れて、ナナリーの後ろに立つ。

「あ、ルルーシュ。今日、パフェが安いんだって、後で食べに行こう?」

「あ、ああ」

俺の答えを聞くと満足そうにユフィは部屋を出て行った。

「で、お兄様はどっちだと思いますか?」

ナナリーはユフィがきちんと部屋の外に出て行ったのを確認すると、ベッドの上に乗って聞いてきた。

「……ユフィ」

「……正解です」

ああ、やっぱり。そんな事はわかっていた。だって、ナナリーはそんな事、出来ないから。

「……はい、ご褒美です」

不意に、唇に柔らかい感触。呆けた俺と、悪戯に成功した子供のような表情のナナリー。

「ユフィ姉様がキスして、お兄様がおきたとき、一寸嫉妬しちゃったんですよ?」

そう言って、ナナリーは部屋を出て行った。俺はただ、唇に指を当てて、柔らかい感触を撫でていた。

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