冬も間近に迫ったこの季節。この数日は暖かな天気が続いているが、季節の変わり目だからか、風が冷たく強かった。僅かに開いた窓から入り込む風が、ひんやりとしてて気持ち良い。
窓から見える青空はとても綺麗で。
寝転んだまま、ずるずると床に滑り落ちる。薄いカーテンがゆらゆらとゆれていた。
何時からここに住んでいるかは分からない。ただ、気がついたらここに住んでいた。それを不思議だと思った事は無いし、可笑しいと思ったことも無い。
ここに住む以前の事は、あまり覚えていない。何処か靄がかかったように曖昧で、考えても無駄だった。
覚えているのは、自分の名前と……弟の名前。
私の名前はコーネリア。それ以外は思い出せない。ただのコーネリア。
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「おい、ルルーシュ」
「……何だ」
「いい加減、あの女の処遇を決めろ」
「………」
「情はお前の弱みになり、弱みはお前を殺す」
「…わかっている。口を出すな、C.C.」
「……」
「ギアスの力は絶対。そうだろう?」
「…絶対?本当にそんなモノがあると思うのか?上辺だけの言葉を私に吐くな」
「………」
「何かあったら。即、私が殺す」
「……悪い」
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部屋の中はくすんだ色に覆われていた。雲が太陽を遮っている。その雲の間から僅かな光が外を照らしていて、私は部屋の中から目を細めて観察していた。
最近良く感じる、言いようの無い不安がある。想い人を待つ独りの時間。それは凄く寂しいが、彼のことを考えてじっと我慢する。もう、もう直ぐ帰ってくるのだから。
そう思いながらぼんやり外を見ると、遠くに彼の姿を見つけた。彼の姿だけは、たとえ何処にいても見つけられる自身がある。そして、彼を見つけたときの喜びは、どんな時でも変わらない。
そういえば、帰ってきたらたまには出かけようと言っていた。確かに今日は良い天気だけれども、そんな日に二人家でのんびりするのも良いかも知れない。二人で静かにお茶を飲んで、思いっきり甘えて、この部屋で今日一日ごろごろしたいと言ったら、彼はどんな顔をするのだろうか?
彼が窓から顔を覗かせる私を見て、一瞬だけ表情を顰めた。だけどそれは本当に一瞬だけで、直ぐに笑顔で手を振ってくれた。
今は、彼がいてくれるだけで気持ちが一杯になる。一緒にいられるだけで、穏やかになれる。それはきっと、これからも変わらない。
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そうして彼女は独り、籠の中で唄を歌う。
与えられるモノ全てが虚構で、今持っているモノも全て虚空。
それでも彼女は幸せなのだろう。
「ただいま、コーネリア」
「おかえりなさい、ルル」
彼女の刻は何時から止まっているのか、何時まで戻っているのか。
それは彼にしかわからない。
狂っている、そう解かっていながらも溺れていくのだ。
でも、それでいい。
彼女は今、紛れも無く幸せなのだから。
彼女は独り、籠の中で唄を歌う。
永遠に醒めない、狂った夢の中で。