私は弱い人間だ、そして愚かな人間だ。昔から分かっていた。自分一人では立ってられない、何も出来ない。幾ら歳を重ねても、背が高くなって、逞しくなっても。
けれどユフィと一緒の時だけは強い自分でいられるような気がした。可愛くて、危なっかしくて、純粋で、無垢で、優しくて、大切な、大切な妹。ユフィの前でなら自然と大人らしく、姉らしく、母らしく振舞えたし、ユフィを守るためなら、ユフィの為なら何処までも強くなれると信じていた。
でも、それは間違いだった。そう最近気が付いた。そんな自分の鈍感さに嫌気がさし、悲観し、絶望する。何て間抜け。何て道化。ユフィの為と思ってやってきたこれまでの行動は、これまでの私は、ただユフィに負担になっていただけだと。ユフィの為だと調子に乗っていた私は、ただ軟弱な、脆弱な、か細い自分を満足させる為に、ユフィに寄りかかっていただけだったのだ。それを今更ながらに気が付かせられた。その時、私は自分の愚かさ、小ささ、弱さを再度自覚した。たった一人の、大切な妹に負担を掛けていたなんて。

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ユフィとはずっと一緒だった。それはとても楽しくて幸せな時間だったし、今後もそうして行けると思っていた。親友として、姉妹として。けれど、結局それは姉妹、親友、何処まで行っても私達の関係はそこまでなのだ。
私は昔、ユフィとの別離の事を考えていたことがあった。そして悩んでいた。理由は三つ。ユフィの名、とユフィの恋。そして、ユフィの、死。
そのうちの二つは今、私の前に現実として聳えている。寂しくて、悲しいが、もう認めなくてはならない。ユフィは行政特区の為にその名を捨てた。ブリタニア。それがどれだけ大切で、重要な事なのかユフィは解かっているのだろうか?それとも、それを理解したうえで、それでいて更に大切なモノがあると言うのだろうか?解からない。結局私は解からない。ユフィがどんな思いなのか、何を考えているのか。
そして、彼女の傍らに立つ騎士。彼はきっと彼女の騎士であり、パートナーであり、恋人なのだろう。遠くから見て、私はそう思っていた。解かっている、理解しているつもりなのに…ユフィだって一人の女性だ。恋だってして、いずれは結婚する。その時私は、笑って見送ってあげないといけない。だが、そんなのは自分への欺瞞だと言うことも知っていた。所詮、私はユフィの姉なのだ。ただ、それだけ。彼女を本当に愛している男性が現れたら、その人こそがユフィにふさわしい。それでいてその事を認められない。何時かユフィを失う日を恐れ慄いている自分。今まで目を背けていた自分の弱さ。今、私はソレを突きつけられている。
もし、もし、万が一、ユフィが死んでしまったら、私はどうすれば良い?それを考えるだけで、私の想いは、心は奈落の底に沈んでいく。生きていけない。その想いは私の血となり体中を駆け巡り、体内を蹂躙していく。寒い、熱い、苦しい。ただ考えるだけで心が引き裂かれそうになる。何で、解からない、知らない、理解できない。何も、全て。

そうして、欲望は想いを喰らい、狂気となって彼女を私の伽藍に閉じ込めた。私はただ、その光景を見ていることしか出来なかった。

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