「ピザ……?」
「ああ」
二人で一人分のピザを分け合う。仲良く二人で。か、どうかはわからないけど、それでも分けて食べる。少しだけ、一切れだけC.C.の方が多くて、そんな当たり前だった事に笑いながら、手をベタベタにして食べる。何故だか食べるペースが遅くて、そんな自分に苛立ちながらも、二人でピザを食べる。
「…この味、懐かしいな」
「ああ」
そういえば、どれぐらい食べてなかっただろうか。少し前は毎日嫌になるぐらい食べるのが日常の一つだったのに。何時からそれすらも忘れてしまったのだろうか。C.C.はC.C.なりに、俺に気を使っていたのか。なんて普段は絶対に考えない事も、今は素直に考えられていた。
人は成長する。良い意味でも、悪い意味でも。
「前より、美味しく感じる」
「そうか?」
「間違いない。だって毎日感じていた味だから」
「久しぶりだから、そう感じるだけだろう?」
「二人で、食べてるから」
「………そうかもしれないな」
予期もしないC.C.の台詞が、俺の心をくすぐった。悔しいが、そう言われてしまうと美味しく感じてしまう。
ふと、瞳があってしまった。視線が交差する。悪戯っぽく笑っていたその表情は、歳相応の少女のようで、本当に可愛らしくて、純粋に綺麗な笑顔だった。
「ふふ、美味しいな」
「……あぁ、お前と一緒だからな」
C.C.の笑顔が止まった。それだけで満足して、ピザをまた一口入れた。
ただのピザ。それでも顔がにやけてしまうほど美味しかった。
――――――――――
「もう、終わるんだな」
C.C.……彼女の呟きに、強く握り返す。未来の終わりが直ぐ其処にある。生ぬるい風と、高鳴る鼓動。時間が経つたびに、身体、心の何処からか熱い何かが噴出しているような錯覚。
色々なモノを捨ててきた。それは親友であり、過去であり、兄弟であり、仲間であり、自分でもあった。もう、捨てた物は拾えない。歩いてきた過去は見れない。それでも、此処まで来た。綺麗とも、大切とも言い切れないこの思い出と、彼女への想いは胸にまだある。
だから―――
「C.C.」
「…ルルーシュ?」
彼女の顔が直ぐ傍にある。後ろには真っ赤に染まった地上の星。
「終わらせよう、俺とお前、二人で」
「…ああ、二人で始めたのだから、二人で終わらせよう」
C.C.を力強く抱きしめる。愛しい、愛しい想いを包むように。もう戻ってこない思い出をかき集めるように、二度と掴めない輝きをかき集めるように、迎えられない未来をかき集めるように。
今はただ、彼女と二人で居たかった。