梅雨だと言うのに暑い。雨も降らず、すっきりとした暑さが嫌になるぐらい纏わりつく。6月も半ばを過ぎ、雲一つ無い晴れ渡った大空は、透き通るような蒼穹で、既に夏と思わせるほどの様相を見せていた。当然ながら、気温も比例しているわけで。窓を開けていても風が無いこの日。全く涼しいわけも無く、ただ日差しが怏々と降り注ぐ。

「…熱い」

C.C.は呟いた。白いシャツにハーフパンツを涼しげに着こなしているが、止め処なく噴出し、流れる汗は止まらない。
着ている服の持ち主は勿論ルルーシュで、線の細い彼だが、それでもC.C.には少しサイズが大きかった。その何とも言えないだぼついた感覚が更に苛立ち指数を上昇させていた。

「………なんで、冷房がつかないんだ」

恨めしげに冷房を睨み付ける。リモコンを入れても、手動で何とか動かそうとも、何とも言わず沈黙を保っている。既に数えるのも億劫になるほどに自慢の鉄拳を打ち込んでも、無意味だった。

「…………ぁ」

ベッドの上では、非常に心地良さそうな表情で眠っているルルーシュの姿。それを眉根を寄せてC.C.は見つめた。汗一つかかずに眠っているルルーシュ。よくもまぁ、こんな暑い中寝れる者だ。と、C.C.は空になったペットボトルを投げ捨てて思考した。

「…しーつ〜」

しかし、コイツはどんな夢を見ているのか……先程から何度も出てくる自分の名前にC.C.は息を止めて、ルルーシュの顔を覗き込む。
綺麗に整った顔は、表情一つ変えず、汗一つかかず、静かな寝息を立てて眠りについている。

「う、しーつー…近い…」

呟くようにもれた寝言にC.C.は飛び跳ねるようにベッドから離れた。思わず身を構え、ルルーシュを警戒する。
全く起きる素振りのない、無防備な寝姿。起きている…?いや、寝ているか。様々な思惑がC.C.の頭を駆け巡る。暑さと思考で頭の中が熱くなっていき、自分ですらも制御できない状態まで引き上げられる。

「……よし」

何かに辿り着いたか、C.C.は冷蔵庫にあるペットボトルを一本、豪快に飲み干すと、窓から投げ捨てた。一回、二回と深呼吸。そして、再びルルーシュの寝顔を覗き込み。

ちゅっ

一口。ルルーシュの頬に。C.C.の唇。それが吸い込まれるように、自然に、ルルーシュの頬に吸い込まれ、彼の頬に見えない痕を残した。
呆けるC.C.。不意に気まずさと気恥ずかしさ、それに自分の思考を思い返し、顔を真っ赤に染め上げる。

「な、わ、私は……?」

何をした?ルルーシュの寝顔に?キス?馬鹿な。これではまるで―――

「恋人のようだな。C.C.」

振り向くと、其処には頬を掻くルルーシュ。何時から?そんな言葉よりも、まず拳が先に突き刺さった。

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