日に日に睡眠時間が減っていくのを感じる。今日の夜もそうだった。
今日もカーテンのなびく音で目が覚めてしまった。目を覚ますと其処は何時もの自室ではなくて、黒の騎士団の長、ゼロの部屋。自分の部屋であって自分の部屋で無いこの場所に、随分と見慣れてしまった部屋。眠さでふらつく視線を動かすと、テーブルの上にはルルーシュの姿。
「…まだ起きていたのか」
「もう目を覚ましたのか?」
薄暗がりでも判る、シーツの跡。それは自分だけの跡。ベッドに眠り込んだときは電気を点けっぱなしにしまっていたはずなのに、今はルルーシュのデスクスタンドだけが小さく灯っていた。その淡い光の近くに置いてある時計が指す時間は、午前3時30分。
僅かなシルエットだけが映る。その後ろではカーテンがなびいている。開け放たれている窓から差し込む風は思いの外強く、肌寒い風が室内に流れていく。
C.C.は未だ寝ぼけている意識で何とかテーブルやソファに躓かないようにルルーシュの傍に歩いていく。そして、その頬に掌を添えた。
「ルルーシュ」
反応は無言。静かな風の音と、遠くを走る車の音、そして虫の音。
「…誰かが見たら如何する?」
「こんな時間に?」
此方を向かないルルーシュの表情は解らないが、その口調からは本気ではないようで。C.C.は微笑を浮かべながら後ろから抱きしめた。肌触りの良いシャツ越しに伝わる体温に何故だか安心感を感じた。
「……何のつもりだ?」
不意討ちの抱擁に呆れたように、表面上はただ淡々に言いながらも、ルルーシュはその身体を動かさない。近くにあるその表情は、気恥ずかしさからか、少しだけ困っていて。C.C.が好きな表情の一つ。
「何の、つもりだろうな?」
ルルーシュの耳元で囁くC.C.の唇がゆっくりと近づいていく。
一欠けらの光すら浮かばない新月の夜。重なる影が常夜の闇に溶けていく。