共犯者が居ない。それだけでこのコクピット内が酷く広く感じた。その空間に潜むのは寂しさか悲しみか。沈むような寒さに私は一瞬だけ身を振るわせた。全く馬鹿げている。幾らルルーシュが大切とはいえ、自分の身を犠牲にするなどと。甘さに哂ってしまう。
少し渇いた唇を指でなぞった。指が僅かに湿っている。先程の接吻。お守り。それは私が彼に渡したのか。私が彼から受け取ったのか。
今頃ルルーシュは、世界を手にするなどと戯言を口にしてるのだろうか。不意に思い付いた思考に思わず苦笑を漏らす。無理だ。あの甘ちゃんでは。言ってる事は大きくて、やってる事は小さくて、その内面は幼くて。ナナリーの為と言いながら、自分の行動を正当化する。
馬鹿にしながら、哂いながら、でも私は何も止めなかった。先の対応だって愚考としか言い様が無い。だけど、私は止めなかった。だからこんな目に、自業自得か。
また趣旨の無い思考に私の口から苦笑が漏れた。段々と薄暗くなっていく世界の中で、ただ瞳を閉じて深く瞑目する。再び目覚める、その時まで。だけど、意識は冴え、思考は覚めさらに私の心を掻き乱す。後悔、孤独、悲哀。その感情が私の身体を静かに駆け巡る。また僅かに身体が震えた。それは感情からか、寒さからか。

「…寒いな」

不意に漏れた一言。結局独りか。哂ったはずなのに何かが頬を流れていった。私はそれを指で掬って舐めると、少ししょっぱかった。泣いているのか、私は…最後に泣いたのは何時だろうか。思い出そうとしても思い出せなかった。それすらが、凄く過去の様な気がして。
私が居なくなったら、共犯者はどう思うだろうか。強がるか、泣くか。いや、きっと両方だな。泣きながら、私を罵倒するのだろう。
少し眠くなってきた。本格的に眠らないと駄目なようだ。さっきまでは眠りたかったのに、今では少し惜しい。そんな気まぐれさに笑った。
眠る前に、意識の消える直前に、何故か憮然とした表情の共犯者が泣いていた。そんな景色を見た。何故泣く?思った言葉は声にならず。代わりに涙が溢れた。

「………」

その理由は直ぐにわかった。悲しんでくれていると、そう感じたから。私は独りじゃないと、そう感じたから。それが私の求めていたモノだと、解ったから。
瞬間、意識は閉じた。死んだのか、眠ったのか。私自身にもわからない。

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