暗い、暗い廊下を歩いていく。この先にナナリーが。急ぐ意思を必死に落ち着かせて、それでもその歩みは速い。歩いていく、暗い暗い廊下を。
ふと、足が止まった。ルルーシュは振り返り、深々と静まる闇を見つめた。思考を埋め尽くす妹の事も、一瞬だけ露と消え、塗りつぶされた。気が付けば立っているのは奈落の上。虚無の上に浮いている。

「C.C.…?」

何故か思い浮かんだのは共犯者の憂いた表情だった。直ぐに考えるのを止める。今はあの女のことを考えている暇は無い、と。だが、歩みは進まない。進んでいるつもりなのに、進んでいる気がしない。最後に見せた、彼女の表情が離れない。

「C.C.…」

胸を過ぎる感情、動かない足。それを不安と呼ぶのだろうか。死ぬ?まさか。消える?まさか。思い浮かぶ考えを否定し、再び歩き始める。だが、歩みは進まない。進んでいるつもりなのに、進んでいる気がしない。
数分前に別れた彼女。時折見せる弱音。暈された本音。無意識に指が唇を擦っていた。ソレに何の意味があるのか、ソコにどんな感情が混じっているのか。交わした契約、その意味。全てはあの接吻に消えていったのか。それは彼女しか知らない。

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