終わりの時間から僅かに進んだ時間。出来るだけ、出来るだけ永く続くように二人は眠る。その深い意識の中で華を見た。

意識が醒めると其処は花園。見渡す限り華の海。互いに傷つけあいながらも、棘の枝を伸ばし、咲き乱れる。周りを漂う匂いに眩暈を感じながら、もう一人を探して歩き始める。手や制服、顔を枝に傷つけられても歩いていく。まるで何かに焦がれるように。

「これで、最後なのね」

「ああ」

何時かの過去。あの時、そんな言葉を交わした。
思い出したとき、新しい傷がついた。

「…泣いているのか?カレン」

「そんなことはない」

だが、あの時確かにカレンは泣いていた。笑顔だったはずなのに、ルルーシュはそう言った。あの時も、花の馨りがした。
傷から、血が滲んでいく。

「ルルーシュ、好き…」

「…嘘だろう?」

笑って言った冗談は、真顔に塗りつぶされた。それでもカレンは笑い顔を崩さなかった。どんなに弱々しいものになっても。
解っていた。本気で好きではなかったと。本当に好きなのはあの人だということを。
それでも、否定されると傷ついた。

「これで、最後なのね」

「ああ」

瞬間、血が華になり、真っ赤な大輪を咲かせた。その花弁は華と言う華を微塵に切り裂いて世界を散らせて行く。そして、カレンの身体も華に寸断され、散った。

――――――――――

何時の間にか閉じていた意識を開くと、目の前には紅蓮、自分の愛機の姿。自分の見ていた夢が、自分自身に後ろめたい。今の、余裕の無いカレンの表情を見たら、ルルーシュは何て言うだろうか?
カレンは深呼吸をしてその考えを振り払う。今は、そんなことを考えているときではない。

……私は
……どんな形であれ、あなたの事が

残った想い出に纏わりつく蝶。その蝶はどうしたらいいだろうか?

「さようなら、ルルーシュ」

多分、もう会うことは無い。紅蓮の風に吹かれ、道端に咲いていた華を吹き飛ばしていく。散った花弁だけが、荒野となった地面を滑っていった。
景色も、花も、馨りも景色を構成する全ての物が、カレンの後ろに風と共に流れていく。

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