C.C.と何処かに行くなんて、そう滅多にあるわけじゃない。だから、稀にこういう出かけるときは、柄にも無く浮ついてしまう。そんな自分が情けないのか、嬉しいのか、複雑な感情を胸に押し留めて歩いていく。
カレンと出かけるときは、あまり何時もと変わらないんだがな…
C.C.はルルーシュにイニシアチブを渡し、のんびりと周りの人々や、景色を眺めながらルルーシュの直ぐ隣を歩いていく。

「そういえば、C.C.、最近出来たカフェがあるんだ。其処に行かないか?」

「ああ、お前に任せる」

と、言いつつもC.C.はルルーシュの手を引っ張り、早く行こうと催促した。束ねられている明緑の髪がふらふらと揺れていた。
こんなにも意思の疎通は曖昧。それでも傍から見ると仲は良いらしい。その矛盾が何時もルルーシュの胸に棘を挿す。


「ルルーシュ」

注文を終え、ケーキが運ばれる前、C.C.はコーヒーを飲みながらルルーシュを見ていた。その瞳は何時も通りで、でも何処かそわそわしてて。

「この店は、カレンとまだ来た事は無いのか?」

「?あぁ…そうだけど」

ルルーシュが答えると、C.C.は聞き取れないぐらいの小さな声で何か呟くと、口元を綻ばせて笑った。ルルーシュは浮かぶ違和感を内心に潜めて、冷静を装ってC.C.を観察した。
C.C.の考えがわからない。その事実が、また一つ、ルルーシュの胸に棘を挿す。
その後はぽつぽつと話を交わしながら、ケーキを食べて、コーヒーを飲んだ。やがて、食べ終わってから暫く時間が過ぎ、そろそろ店を出ようと席を立った瞬間、C.C.があやすような、優しい声で言葉を紡いだ。

「ルルーシュ。私は、やがてお前の傍から居なくなる。だから気にするな」

「…は?」

難しい。ルルーシュは全く意味を読み取れなかった。

「だから、コレは最後のデートなのさ。お前と出かけるときは、何時もそう思っている」

意味が解からない。それでも自分の頭に血が上っていくのをルルーシュは感じた。それでいて胸に悲しみが挿す。人目をはばからずにC.C.を抱きしめると、彼女は驚いた声色でルルーシュに話しかけた。

「おい、ルル――」

「最後だなんて、言うな」

C.C.の言葉も耳に入らない。ルルーシュが何とかその言葉だけを言うと、C.C.は曖昧ながらも、頷いてくれた。

――――――――――

C.C.もカレンも、二人とも大切で。二人とも好きで。
C.C.は分かっているからも何も言わない。自分の感情を隠すわけではなく、かと言って曝け出しているわけでもなく。ただ傍に居るだけ。
それが健気で愛しくて。
ルルーシュはC.C.を知らずのうちに傷つけていたと、今更ながらに気が付いた。

inserted by FC2 system