ルルーシュは夢を見ていた。コーネリアと一緒に居る夢を。
何処までも、地平の果てまでも白い世界。其処に浮かぶ蒼い海。白と蒼の境界も分からず、風も、音も、温度すらも何も無い。
確かに隣に居るはずなのに、コーネリアの姿がルルーシュには見えなかった。気配はするのに、触れられない、感じられない。

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ルルーシュは保健室のベッドで目を覚ました。苛烈過ぎるスケジュールが遂に祟ったのか、朝のHRに倒れてしまったのだ。身体中から血の気が引いて、視界が白くなった先から覚えていない。
夢、寂しさと幸せが混同したような、複雑な夢だった。心の底が冷えるような、でも身体の芯から暖まるような。その余韻に頭を曇らせながら、ただ天井を見つめ続けている。
寝てしまえば、続きが見れるだろうか?それとも、寝れずに現実に醒めたままだろうか?

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薄く開けた視界の端で、カーテンが風に煽られていた。

「ルル、目を覚ましたか?」

コーネリアは僅かに動いた瞼を見て、小さな声で、囁くように耳元で問いかける。ルルーシュは返事をしないで、黙って目を閉じている。

「ルル…」

ルルーシュの姉、コーネリアは返事の無いルルーシュの寝顔を見つめながら、心配そうに溜息を付いた。
弟は全く動かず、ただ其処に寝ていた。布団には微塵の乱れも無く、ただ胸が上下に動いているだけ。よほど疲れているのか、全く起きる気配すらも無い。表情は整っていて、整いすぎていて逆に怖い。白く、真っ白く染まった肌は、血の気すらも感じさせない。本当に、本当に人形のようだ。まるで死んでい―――
その考えを否定するように深呼吸をする。呼吸を整える。

まるで死んでいる、死体のように。或いは、本当に死んでいるのでは…?

コーネリアは椅子から身を乗り出して、確認するようにルルーシュの頬に手を当てる。ルルーシュの唇に手をかざす。頬は、温かい。だが、それが自分の体温か、ルルーシュの体温か、定かではなかった。
本当に寝ているだけなのか、死んでいるのか、全く分からない。

「おはよう、姉上」

その声にはっ、と意識を傾けると、ルルーシュがいたずらっぽく微笑んでいた。その表情に僅かな苛立ちと、大量の安堵が胸を占めていく。
動揺していた自分が、馬鹿みたいだ。先程までの不安がコーネリアの頬を赤く染めた。コーネリアは非難と安堵の思いを込めて、ルルーシュの頬に口をつけた。
その感触に、満足するかのように、ルルーシュは再び目を閉じる。

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コーネリアは執務室の机の上で目を覚ました。苛烈過ぎるスケジュールが遂に祟ったのか、つい机の上に突っ伏せてしまった。強烈な眠気に身を任せ、視界が黒くなった先から覚えていない。
夢、懐かしさと後悔が混同したような、複雑な夢だった。心の底が冷えるような、でも身体の芯から暖まるような。その余韻に頭を傾けながら、目の前の資料を眺め続けている。
このまま眠気に身を任せば、夢の続きが見れるだろうか?それとも起きたまま、現実に戻るべきだろうか?

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白い世界、その中でルルーシュとコーネリアは互いに身を寄せ合い、眠り続ける。
蒼と白の境界は混ざり合って、溶け合って。風も、音も、温度も無い世界。でも、互いに存在を感じあって。
何時までも、何時までも。次に目を醒ます、その時まで。

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