コーネリアがその知らせを受けたのは、既に日が暮れそうな夕方。ルルーシュが、今晩発つと。

「…随分と急なのですね」

「予定を早めたそうだ。私も詳しいことは聞いていないのだがね」

シュナイゼルには届いていて、コーネリアにはその知らせは届いていなかった。その意味を考える前に、コーネリアの身体は無意識のうちに動く。

「どうするんだい?コーネリア」

シュナイゼルの問いかけが動き出した身体を止め、働き始めた思考を分断した。本当ならば、妹のユーフェミアの方が心配だった。一刻も早く傍に居てあげたかった。だが迷わず、自然と何の思惑も無く、コーネリアはルルーシュに会いに行くことを選択した。

「申し訳ありませんが、ユフィをお願いします」

「…そうか」

シュナイゼルは何も言わず、黙ってコーネリアを送り出した。

――――――――――

辿り着いたのは、最早出発時間ぎりぎりだった。今、目の前にルルーシュが一人で立っている。

「一人なのか?ナナリーは?」

乱れていた呼吸を、身だしなみを整え、ルルーシュに声をかけた。

「…姉上」

振り返ったルルーシュの表情は意外にも普段のままで、少し前にあった出来事など微塵に感じられない。

「ナナリーは既に中にいます。荷物も、一緒に」

その声も、変化は無く。

「……もう、会えないのだろうな」

「そうですね」

コーネリアの呟きに、ルルーシュは思考するには短すぎる間をおいてからはっきりと答えた。そして再びコーネリアに背を向ける。その後姿は確かに覚悟を秘めていて、同時に崩れそうな儚さも漂っていた。言いたい事は、確かにあったはずなのに、それをコーネリアは言葉に出来ない。ただ、その後姿を送る事しか出来ない。
やがて、その後姿も小さく消えていく。そして、見えなくなった。コーネリアは何時までも何時までも、その後姿を眺めていた。

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