殺したくて、殺したくてどうしようもない女性を愛してしまった。
その愛は当然の様に歪んで、残忍で、汚らわしい愛になった。
本来、愛と言うのはもっと綺麗で、尊く、崇高で美しいモノなのだろう。だから、俺の持つこの想いは愛ではなく、きっと欲望。

彼女は綺麗で、気高くて、愛しくて。そんな彼女を犯して、壊して、支配して、誰の目にも映らないよう、誰の手に触れさせないように閉じ込めるのは、歪んでるけど、純粋な想い。

俺は誰よりも彼女を深く、高く愛してる。
だから傷つける。でもそれは間違っていると理解している。

それでも止まらない。彼女を確実に罪の意識、罪の海に溺れさせる。
誰にも知られず、見られず、赦されず。ただ沈むように狂って逝く。


――――――――――


「……ぁ……ぅ…」

押し殺して締め付けられた鳴き声が、部屋に響く。異様なほど苦く、甘美で、熱っぽい空気が満ちていた。

ギシギシとベッドが揺れ、コーネリアの手を縛っている縄が悲鳴を上げているが、荒い息遣いや、濡れた水をかき混ぜる音、そしてコーネリアの鳴く様な喘ぎ声の方が勝っていた。

「……ご、めんなさぁ…ぃ……」

「五月蝿い…っ……は…っ」

「ぃや………いや…ぁっ…!」

嫌がる彼女を押さえつけて、無理やり犯した。犯し続けていた。
彼女の手首は縄に縛られて、痛々しく紅い痕として滲んでいる。乱れた紫髪はシーツに広がり、月光の下で妖しく、艶かしく輝く。そして俺は彼女が鳴き、涙を零し、泣いて、乱れて抵抗すればするほど、加虐的な哂みを浮かべて、さらに愛した。

…愛、する?

痛めつけることが、犯すことが愛なのだろうか…人の尊厳を踏み躙るかのような暴力。それは愛と同意義なのか。
狂って、沈んでいた思考が、冷静に醒める。そんな良心と呼ぶ様なモノを俺は意識の底に無理やり埋めた。
今はコーネリアの身体を膣内を貪って、支配していれば良い。彼女は、俺はもう逃げることなど出来ないのだから。

「ぁ…っ…あ………いやぁ……っ!!」

ごめんなさい…で、でも…

「ル…ルシュ…やぁ…やめてぇ…っ……ぁぁっ!!」

ごめんなさい…で、でも…もう、この欲望は止まらない。

コーネリアの唇から、手首から流れる血が、桜色の唇を紅く染め上げていく。白い腕に紅い筋が奔って行く。
俺はただみっともないほど、愚直に腰を動かしていた。


――――――――――


「……ルルーシュ」

コーネリアが微かな声で俺を呼んだ。俺は疲労で重くなった身体を彼女のほうに向ける。

「…なんだ?」

「何時まで、こんな事を続けるんだ…?」

そっと彼女を抱きしめる。髪を撫でながら、その白い首筋に顔を埋めると、彼女はくすぐったそうに目を細めて、ぎゅっと抱きしめてきた。

「……姉上が、俺のモノになるまで」

「……………もう、なっているじゃないか」

少しの沈黙の後、悲しそうな表情で俺の耳元に呟く。

「もう…私の全ては、お前のモノだ」

「…違うよ、姉上。俺は、姉上のココロも欲しいんだ」

「……心だって」

俺は首を横に振った。目を閉じて、コーネリアの胸に耳を当てる。彼女の鼓動が聴こえた。コーネリアは一体どう思ってるのだろうか。懸念か、不安か、同情か、嫌悪か。
何にしても、彼女に見捨てられたら、俺は終わる。

「ルルーシュ」

不意に強い力で、押えつけられた。俺の上に圧し掛かるコーネリア。その深紫の双眸に俺の表情が映ってる。

「ルルーシュ、私が信じられないか?」

「………」

悲しげな声が俺の耳に残響する。勿論、信じてる。信じられないはずがない。
でも、それは違う。彼女の愛と、俺の愛。それは根本的に違うモノで、決して交わることはない。
俺が貴女に求めるのは服従、身も心も、その全てが俺に支配されること。壊れるぐらい、俺を愛すること。
俺を狂わすぐらいに。

「好きだ…コーネリア」

「……っ!どうして…!!」

押えつけている両手に力が入る。まるで枝のように俺の手首が折れそうなぐらいに強い力だった。
そして重なる唇。コーネリアの舌はゆっくりと侵入し、口内を犯し、唾液を舐め取り、喉を鳴らして飲み込む。空気も、生気も全て吸い尽くしそうなほど、荒々しく。深く蹂躙するように暴れている。

「…ルルーシュ」

「俺は、貴女をもっと酷く、がむしゃらに犯す。もう、狂いすぎて、正気に戻れないぐらいに」

「……あぁ」

挑発的に喉を鳴らし、口の端を上げ、彼女は短く呟いた。その姿は普段とは懸け離れていて、とても蠱惑的で、扇情的で。
それは、とても無理している。それが分かるから、悲しい。

純粋に綺麗な、紫の双眸。
それすらも汚して、壊してしまいたい。
彼女の心も全て、蹂躙して。
俺も一緒に狂いたい。
正気も全て捨てて、何も考えられないぐらいに狂って壊れたい。

そう想う俺の心はもう遠く、決して元には戻らない。
そして朽ち果てて、崩れて奈落に沈んでいく。
それがきっと俺への罰。

「コーネリア…」

「…ルルーシュ」

彼女と交わしたキスは、甘い悲しみと、苦い罪の味がした。

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