雲に佇む月が、ぼんやりと輪郭を滲ませながら、部屋の中を照らしつけている。
仰向けに、意識を滲ませながら視線を隣に向けた。
月明かりだけが照らす薄暗い部屋の中、うっすらと青白く浮かぶ背中。
手を伸ばして触れた。指先で、髪を、肩を、背中をなぞる。

「……ん」

僅かに揺れた。綺麗な紫髪が、さらりと流れる。その髪を掻き分け、露わになったうなじに唇を付けた。
そのまま強く吸う。唇を離すと、少し小さな紅い痕が出来ていた。

「…ん、ルルーシュ?」

寝返りをうって、綴じていた睫毛が開いた。ぼんやりと、意識の定まっていない瞳が俺を捉える。

「ごめん、コーネリア。起こしちゃったね」

「……いや」

気だるそうな声。普段決して見せない、コーネリアの表情。

「……眠れないのか?」

上体を起こしたコーネリアは、柔らかい視線を俺に向け、両手で俺の頬を包む。

「ああ…そういうわけじゃないんだ。ただ、目が覚めちゃって」

俺の言葉に、コーネリアの手に少し力が入った。暖かい、彼女の体温が俺の顔に広がっていく。

「……何か、母上みたい」

コーネリアは静かな声で笑った。その微笑みが、俺を酷く安心させた。

「…そうか、今日ももう遅い。そろそろ寝ないとな」

耳元でコーネリアが囁く。彼女の香りが、鼓動が、俺を心地よい眠気に引きずり込んでいく。
意識が微睡む。やがて、俺は深い、幸せな眠りへ堕ちて行った。

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