そう、解っていた。
ずっと昔から解っていたはずだった。何時かこの日が訪れると。ただ、それが早いか遅いかの違いだ。
けれど、俺はそんな事を望んでいなかったのかもしれない。

貴女を、この手で殺した。
血がこの身体にまとわりつき、未だにその臭いと温かみを残している。貴女の身体は真っ赤に染まり、紅の花を咲かせる。
それは、一つの芸術品みたいに美しくて、綺麗だった。その安らかな表情は、ただ眠っているようにも見える。だけど、貴女は目覚めない。もう、永遠に。
この両手が血に染まったとき、貴女は微笑んだ。覚悟を決めたように、寂しく、でも安らかに。

腕の中で、その細い身体がどんどん冷えていく。血の気が霧散していって、軽くなっていく。
せめてにと、その顔を拭って、冷たくなったその唇に口をつけた。

苦い、錆びた鉄のような味がした。
きっと、罪と悲しみの味。

「さようなら、コーネリア。好きだったよ…」

もう冷え切った身体を強く抱き、貴女の顔を見つめる。
結局、皆殺してしまった。
もう、永遠に会えない。例え、この身が死んだとしても。

「姉上…」

頭に浮かぶのは、幼い頃の遠い過去。あの頃は無邪気で、毎日が楽しくて。
でも、もう戻れない。

最後に貴女が見せたのは、安らかな笑顔。

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