「やめ…てくれ、姉上……」

コーネリアは、弟の惨めな姿を見て笑う。

「…ぅ……っ」
「どうした…?ルルーシュ、何を我慢することがあるんだ?」
「…ぁ…ぁあ……っ!」

ベッドの軋む音が、重い空気漂う部屋に響く。それに混じって聞こえる、ルルーシュの苦難に満ちた声が、コーネリアの胸を昂ぶらせる。
淡い好意、尊敬、信頼の想いを向けていた姉に組み敷かれ、弄ばれ、涙を瞳に滲ませている。

あぁ……何て可愛そうなルルーシュ。
そして、私は何をしているのか……

コーネリアの笑う表情の下、心は静かに涙を流していた。

弄ぶ感情と共に、悲しみの感情が沸く。ルルーシュにはきっと分からない。分からない様にしてるのだから。

誰よりも優しいルルーシュ。きっと私の中身を知れば、憎み、軽蔑するどころか、一緒に悲しんで、泣いてくれるかもしれない。
自分の想いが私を傷つけてしまったと、嘆くかもしれない。
聡明だから、誰かの悲しみがわかってしまう。優しいから、誰よりも傷つく。心が温かいから、誰かの罪も背負ってしまう。そんな誇れる弟。

私やルルーシュ、世間から見れば、少しだけ狂った愛。だが、我が皇族内では罪であり、禁忌であった。

何故愛するだけなのに、罪になってしまうのか。
悩みに悩みぬいた挙句、辿り着いた結論は一つ。彼だけが罪に問われない方法。私は衝動的に実行に移した。

コーネリアは、ルルーシュを犯した。
狂うほどに犯し、留まる事無い想いで愛する。だが、愛されることは決してない。

何故こうなってしまったのか、他に選択肢は無かったのか。
他に選択肢は無かった。否、考えなかった。そして、如何してこんな愛し方しか出来なかったのか。
不器用で、痛々しくて、ただの自己満足。
こうするしかなかった。だが、私はそれを望んでいた。


――――――――――


「……姉上」

行為の後始末をしながら、ルルーシュはコーネリアを呼んだ。コーネリアはルルーシュの後ろからそっと優しく抱きしめる。

「…どうした?ルルーシュ……?」

コーネリアの腕に、ぽたぽたと冷たい水が垂れてくる。ルルーシュは泣いていた。

「何で、泣いてるんだ」

何も答えず、ルルーシュは泣いていた。コーネリアは解かっていなかった。ルルーシュの泣く意味が。

ルルーシュはコーネリアの想いを理解していると。
自分の所為で姉が葛藤に苦しんでいると。
ルルーシュに罪がなくとも、コーネリアが罪を犯したなら、それは自分の罪でもあると。

ルルーシュがそう思っていると、コーネリアは全く気がつかない。

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