彼の部屋に入ると、珍しく彼は何かに集中しているらしく、こちらに見向きもしなかった。そっと後ろから覗いて見ると、何かを一生懸命に考えているようだ。学園の課題だろうか。
さり気なく音をたてても、ふらふらと後ろをうろついても、彼は一向に気付く様子も無い。折角来たのに、少し頭にきた。

「ルルーシュ!」

「…ぎゃっ」

部屋に入ってきた少女、ユーフェミアは後ろから思いっきり抱きついた。急な衝撃に、ルルーシュは情けない声をあげて机に倒れる。

「ユ、ユフィ…?」

「ぎゃっ………って、凄いの聞いちゃいました」

「……早く離れろ」

滅多に聞けない声を聞けて、少し上機嫌のユーフェミアと、ぶすっと不貞腐れたような表情のルルーシュ。もがいて振り払おうとしてるけど、思いっきり力を込めたユーフェミアの手は彼を捕まえて離れない。

「ルルーシュ、何してるんですか?」

そう言いながら、ユーフェミアはすりすりとルルーシュの頭に頬をすり寄せる。

「ユフィ、離れろ!」

口調の強い物言いに、反射的にユーフェミアは離れてしまった。ルルーシュが睨みつけても、ユーフェミアには悪びれた様子は全く無い。
にこにこ笑っているユーフェミアと、顔を赤くして大きく溜息をついているルルーシュ。

「何してたんですか?ルルーシュ」

「……何だっていいだろ」

ルルーシュの気を知ってか知らずか、可笑しそうに問いかけるユーフェミア。対するルルーシュは少し不機嫌そうにそっぽを向いた。

「怒ってるんですか?」

「……別に」

悪戯っ子の様に覗き込むユーフェミア。目を逸らし、またそっぽを向くルルーシュ。

「…どうしたんだ?」

ユーフェミアが何かを言いかけたときに、タイミングよく扉が開いた。

「こんにちは、姉上」

「……こんにちは、お姉さま」

扉を開けたコーネリアは何時に無く上機嫌なユーフェミアと、何処か憮然としたルルーシュの二人を見比べて、少し噴出しそうになるのを堪えた。
ユーフェミアはルルーシュの隣で笑いを堪えている。ルルーシュはこんな自分を見られたのが恥ずかしいのか、顔を少し赤らめて後ろを向いてしまった。

「ユフィ、何かあったのか?」

「いーえ、お姉さま、何もありませんよ」

「ん、そうか?で、何てルルーシュは拗ねてるんだ」

「……別に、拗ねてない」

自分に向けられてる興味の視線が気まずくて、ルルーシュは更に不機嫌な声で答えてしまった。二人が少し噴出したのが聞こえた。

「……?」

いまいち、要領の掴めないコーネリアは、扉を閉めようとした。その後ろを振り向いた一瞬にユーフェミアはコーネリアに飛びつく。あらかじめ狙ってたのだろう、その動きは獣のようだった。

「お姉さま!!」

「……痛っ!」

勢いよく、コーネリアは扉に頭をぶつけた。ただそれだけ。見事な無反応。

「……お姉さま」

「……姉上」

不満そうな二人の視線を受けて、コーネリアは少したじろいた。

「…ユフィが抱きつくのなんて、日常茶飯事だろう?」

「それはそうですけど…」

ユーフェミアの反応を見て、コーネリアはルルーシュの不機嫌な理由を看破した。分かったとたん、笑いが止まらなくなってしまった。

「で、ルルーシュは面白かったのか?」

「ええそれはそれは…ぎ」

「ユフィ!」

これと無い満面の笑みのユーフェミアと、今にも歯軋りの聞こえてきそうな表情のルルーシュ。

「そうだな、もしルルーシュが抱きついてきたとしたら、流石に驚くな」

「…はぁ?」

急に方向の変わったコーネリアの呟き。間の抜けたルルーシュの声が部屋に響いた。ユーフェミアは上機嫌な表情が一転、少しムッとした表情になる。

「そうだな…例えば、こんな風に」

そう言いながら、ルルーシュの首に腕を回すコーネリア。ルルーシュは突然の抱擁と、コーネリアの匂いに、頭が真っ白になってしまった。

「…どうした、ルルーシュ?ほら、もっと力を入れろ」

「は…はい…姉上」

コーネリアが耳元で囁く。ルルーシュは何もわからず、ただコーネリアの言われるがままに、手を腰に回し、身体を更に密着させる。
やっぱり、ユフィより大きい…など、真っ白になった頭で思っていた。

「ん…何を緊張してるんだ?そんな表情を見せられたら、いくら…」

「いい加減離れてくださいっ!!」

無駄に艶かしい抱擁に見惚れてしまっていたユーフェミアだが、コーネリアの一言で我に返り、二人の間に割って入る。

「…ユフィ、妬いているのか?」

「な…何言ってるんですかっ!?そんなわけありませんっ!!」

「ほら、そんな事を言うんじゃない」

言いながら、コーネリアは二人纏めて抱きしめてしまった。

「お、お姉さま!」

「く…苦しい」

二人に挟まれる形で、抱きしめられるルルーシュ。いい加減に振り払おうとしたが、二人の顔はとても楽しそうで、つい躊躇ってしまう。
そのまま三人は、日が暮れるまでずっとじゃれあっていた。

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