さび付いたブランコに座ってシャボン玉を吹いた。泡沫は5秒も持たずに割れて消えた。
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団栗の木が実を転がして遊んでいた。コーネリアとユフィはそれをまるで宝物のように集めていた。
実際幼い頃は宝物のように感じるのだろう。コーネリアはいささか成長してしまっていたが。夕焼けの太陽が世界の影を引っ張っている。
コーネリアは感慨にふけっていると、目の前をシャボン玉が通り過ぎた。
「あ、ユフィ」
「おねえさま…?あ、シャボン玉!」
一つ二つとシャボン玉が過ぎていく。その発信源を目で追うと、視線の先にはルルーシュが、シャボン液にストローを浸していた。そしてストローに息を吹き込む。一つ二つと小さなシャボン玉が生まれていた。硝子よりも透明で、空気よりも軽い泡沫が。
「凄い、ルルーシュ!!」
泡沫は次々に消えていく。だけど次々に生まれて行く。ユフィはどうにかして掴もうとしているけど、当然手に入らなくて。夕日に包まれる世界を、透明なシャボン玉が駆け抜けていく。そして、直ぐに跡形も無く消えていく。それは何だか、凄く現実味を帯びていて。
「わぁ、わぁ、私もやっていい?」
「ああ、その為に持ってきたんだ」
ルルーシュはポケットから新しい容器とストローををユフィに差し出し、ユフィは意気揚々としてシャボン玉を作り出す。大小様々なシャボン玉が、団栗の木を彩る。コーネリアは満足げに微笑んでいた。
夕焼けに当てられて七色に光るシャボン玉。ユフィが強く吹けば、ルルーシュは弱く吹き。暗くなっていく世界を、次第に色の消えていくシャボン玉が飛んでいく。
「ねえ、ルル。どうやったら、大きなシャボン玉が出来るの?」
「え、と。弱く、出来るだけ静かに吹き込むんだ」
こうやってね。とルルーシュは大きなシャボン玉を作り上げた。それはユフィの顔の前で、ふわっと消えた。
「きゃっ」
驚いたユフィはお返しとばかりに、ルルーシュの方にシャボン玉を飛ばす。だけど、風に煽られて逆にユフィの方に戻っていった。
「きゃ…もう!!」
「あははっ」
賑やかな二人の喧騒。それをBGMに、コーネリアは沈む太陽を目で追った。
やがて完全に日は沈み、真面目に帰らないといけない時間になる。
「ルルーシュ?」
遠くに聞こえるマリアンヌ様の声。ルルーシュは我に返り、慌てて声のする方に戻っていく。
「あ、姉上。コレを…」
最後に、私に小さな容器を渡して。
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「む…何故だ」
夕食後、コーネリアとユフィはこっそりとシャボン玉を吹いて遊んでいた。ユフィは大小様々な泡沫を宙に転がしているというのに。コーネリアは全く一つも出来なかった。中身はキチンと入っているというのに。
「……ルル」
不審に思ったコーネリアが容器の中身を見てみると…其処にはただの水が入っているだけだった。